
本当はエレキギターが欲しかったのですが、ギター本体だけでなく、アンプ(音響を増幅するもの)などお金のかかる機器がないと音がならないので、あきらめました。
それでもこの「アコースティック・ギター」でずいぶん充実した時間を過ごすことが出来ました。
友達と仲たがいして、一人ぼっちで過ごしていた時期、ギターが友達でした。今でも、仕事のストレス発散のために、ギターを楽しんでいます。
でも一番困るのは、夜です。さすがにご近所の迷惑を考えると、仕事から帰宅後の夜にギターを弾くのは、ためらわれました。
しかし「やっぱり手軽にエレキギターを弾いてみたいなあ」と思っていました。
きっとヘッドフォンにつなげれば、夜中でもエレキギターを弾くことができるだろうし、CDプレイヤーなどとつないだら、好きな歌手と「共演」もできるんだろうなあ、と憧れてもいました。
そんな夢が、あるエレキギターとの出会いで、実現できたのです。
肩身のせまいギタリスト

ギターを他人の「耳」を気にせず、迷惑をかけずに楽しみたい。
この思いはどんどん強くなりました。
特に、仕事がヘビーになり、ストレスがたまると「ああ夜中、エレキギターをかき鳴らしてスッキリしたい」と思うのです。
それでときどき、「まあいいかあ」と思って夜中にギターを弾くと、翌朝、ごみ出しのときなどに、お隣の方からチクリと皮肉を言われたりということもありました。
夜中にさまようギタリスト

ギターに、綿や布きれを詰めて、「小音」にしようと考えたこともありました。ですが、6本あるギター弦を外して、また付け直し、さらに音の調整(チューニング)をやる手間を考えると、それもなかなか面倒です。
非常手段で、浴室や押入れにギターを持ち込んで弾いたこともありますが、かえって音が響いて、逆効果でした。
夜中に近所の公園に行き、弾いたこともあります。
でも、なまじっか、よいギターなので、音色が大きく響きます。公園近所のお宅への迷惑にもなると気が付いて、撤収。
ギター片手に、夜中の街を、適当なスペースを求めてさまよったこともあります。
私にぴったりの、エレキギターを見つけた!

そんなある日、そうだ、「消音機付き」のギターがあるかもしれない、と楽器屋に出かけました。
果たして、それはありました。ただ、その消音機付のギターも魅力的でしたが、そのかたわらにいままで見たこともないエレキギターが置いてありました。
本体にスピーカーらしきものが内蔵されています。もしかしたら、と興奮して、店員さんにあれこれ聞きました。
- アンプ(音響を増幅する機器)もスピーカーも内蔵されているから、別売りの物を購入する必要ない。
- ヘッドフォンをつないで楽しむこともできる。
- 有名アーティストも、ちょこっとリビングなどで弾くときに使っている。
- 形から、「ぞーさん」と呼ばれている。
そんなことを教えてもらって、一も二もなくすぐ購入。
その日の夜から、自宅で思いっきりエレキギターをかき鳴らしました。
ストレス発散!思わず徹夜しそうになりました。
夜中のエレキギター、昼にも活躍
次の日も夜中にエレキギター。この日からは、CDをつないで共演!
まずは、大好きなクリスタル・ケイの「きっと永遠に」。
彼女の歌声とピアノ演奏に私のエレキギターの音色が重なって、もう最高な気分!夜中にひとり、興奮しました。
こりゃ、誰かに聞かせたい。そう思い、次の日の休日、近くの公園に行きました。もちろん、昼間です。
そこにいたのは、小学生や子連れの家族、酔っぱらいのおじさんに中国人の集団。
「きっと永遠に」のイントロのピアノに合わせて、私のエレキギターの演奏がはじまります。
最初に反応を示したのは、近くの鉄棒で遊んでいた小学校低学年の女の子、二人。
演奏する私の前に、二人して、ちょこんと座って聞き始めました。しかしそのうち、ふっといなくなってしまいました。「飽きたのかな」と思って、私は演奏を続けました。
中国人の反応は、シャイな日本人とは対照的です。「これはなんなんだ」という感じで驚き、指をさして仲間に教えています。
騒ぎがおさまってふと足元をみると、風に飛ばされないように石が置かれた紙が見えました。そのきれいな花柄のメモにはこう書かれていました。
「すてきな音楽をありがとうございました。少しですが、二人からの感謝の気持ちです」
そこには、20円が添えてありました。
また、酔っぱらいのおじさんは「あんた、テレビにでるのかあ。応援するぞ」といって、缶コーヒーを置いていきました。
好きでたまらないことは、大事にしよう!
好きでたまらないこと。
特に職業にしようとか、本格的にやろうとか、そんな気負いがなくても、「好きでたまらないこと」はストレス発散には最高です。
つくづく「趣味があってよかったなあ」と思う半生です。
夜中のエレキギターは、昼にも花開きました。自分だけでなく、周りの人にまで楽しみを分け与えることができたのです。
更にこの喜びには、うれしい「副作用」もありました。
「通勤中でも、仕事のランチタイムでも、ギターを弾きたい!」そう思って目をつけたのが、アイパッドのアプリでした。
ギターのアプリはなかなか良いものがありませんでしたが、アイパッドの画面にぴったりのピアノアプリを見つけました。
エレキギターの楽しみが、ピアノへと広がっていったのです。
あの時、このエレキギターを見つけてよかったなあとしみじみ思います。
横浜在住、家内とセキセイインコと同居。
私の生まれた丁度百年前「桜田門外の変」起こる。
たった100年前に、龍馬たちが命をかけていたことに驚かされます。
もっと見聞を広めたいと「放送大学」を視聴したり古典を読んだりしています。営業マン