長年携わった仕事から全く未知の仕事への異動。その新しい仕事でリーダーとして任された不安・・。そんな「不安」を乗り越えるために、背中を押してくれる一冊。

小一郎秀長
戦国時代に生きた人物の死生観に感化され、戦国時代をこよなく愛するアラフィフの中年男性です。
石を積み上げ石垣を作り、その上に築き上げた城は本当に圧巻であり、周囲の人を巻き込み、城巡りツアーを定期に開催中!一緒に、戦国時代の魅力を感じてみませんか☆彡
長年経験した仕事から離れ、新しく任命された部署でリーダーという重要な責務を経験された方がたくさんいると思います。

不安を抱えたまま新しく与えられた席に座り、さて、リーダーの第一歩として何からスタートしようか、部署メンバーとどのようにコミュニケーションをとろうか、迷いのままのスタートであったのではないでしょうか?

私も過去にそのような経験のある一人です。

自分が正しいと考え実行したことが、部署メンバーに認められず、徐々に大きな悩みを抱えていくようになりました。

そのような時期が続き、リーダーとしてのポジションを諦めかけていたとき、「リーダーの想い」の大切さが強く語られた書籍に出会い、それを励みにして、壁を乗り越えることが出来ました。

そんな素晴らしい一冊をご紹介します!



新しい仕事、そしてリーダーとしての責務に悩む日々・・。


長年従事してきた仕事の実績を買われ、新しい部署のリーダーとして抜擢されたのが苦難のスタートでした。

長年携わってきた仕事で多くの試練を乗り切ってきたとの自負もあり、新しい仕事もすぐに覚え、メンバー皆を仕切れるようになれば、難なくこなしていけるだろうと甘い期待が多少なりともあったことは否めません。

しかし、そうは簡単にいきませんでした。今までの仕事とは全く勝手が異なるのです!

それまでは、技術職であったことから実績が出ればすぐにプラス評価に繋がったのですが、品質保証との新しい仕事では、保証業務が出来て当たり前でした。当然それだけではプラス評価とはならず、加えて顧客対応が上手くいかなければすぐにマイナス評価に繋がるという厳しい仕事内容でした。

当然ですが、新しい部署であるためメンバーの性格なども全く分からず、どのように仕事を割り振ればよいか、そしてどのように接すればよいか、悩むばかりで混乱をきたしておりました。

当初の甘い目論見は音を立てて崩れていきました。

リーダーらしいことを実施しようとしても空回り・・。


とはいえ、仕事をしないわけにはいかないので、我流で着手し始めました。

毎日朝礼を行い、その日しなければならない仕事の伝達や今までの自分の経験から大切に感じたことなど、10分前後話をしていたかと思います。まずは第一歩として、メンバーとのコミュニケーションが必要と感じたのです。

これが空回りでした。コミュニケーションとはなっておらず、一方通行であり、メンバーには響いていませんでした。

しばらくは気づかずにいたのですが、うわさで聞こえてきたのは、「リーダーの話は長くて、何が言いたいか全く分からん・・」 。

正直焦りました。

かといって、辞める勇気もなく、そのまま継続しておりました。その結果、メンバーとの溝が出来ていくように感じました。溝を感じ始めると、仕事の割り振りをしにくくなり、結果、自分で抱える仕事が増えていきました。

当然、定時内では処理出来ずに残業が増え、とうとう、12時近くまで仕事をしても終わらなくなってきました。

そんな自分の状態をよそ目に、メンバーは自分の業務が終わると、声掛けもなく、そそくさと帰ってしまう状態が続きました。

そんな様子が上長に聞こえ、「お前はリーダーとして何も出来ていない!」と叱責され、過去の実績が大きく崩れていくのを感じた瞬間でした。

「自分にはこの部署のリーダーは勤まりません」と言ってしまいそうな状態まで追い込まれていました。

リーダーの在り方に悩み、リーダーとしてどうあるべきか、リーダーにまつわる本やネット情報を読み漁りました。

理想的なことはたくさん書いてあり、なるほど。。と思うのですが、あまりにも実施すべき事項が多いように感じ、悩みの解決になりませんでした。

そんな中、この本に出会い、感じ入り、自分が実施するのはこのことだ!と共感した結果、行動を大きく切り替えることが出来たのです!

『心にしみる31の物語』の中に見るリーダー像


それは、小倉広氏著『心にしみる31の物語』の中にありました。

この本の中には、人としての素直な生き方やリーダーとしての在り方など、実話で語られており、一つ一つに感銘を受けました。

その中で、特に大きく心に響いたのは「釜石の奇跡」に関する実話でした。皆さん、この実話はご存知でしょうか?

東日本大震災で、岩手県釜石市で3000人近い小中学生のほぼ全員が津波の難を逃れ、生存率99.8%、「釜石の奇跡」として語られております。

釜石市では防災への取り組みが2006年から行われており、その仕掛け人こそ、群馬大学大学院教授 片田敏孝氏でした。

片田教授の方針としては、子供たちへの教育の根幹「避難3原則」としてシンプルに繰り返し伝えることでした。

  1. ハザードマップ(災害予想図)を信じるな
    「ハザードマップはあくまでも土地の高低や過去の事例などをもとに作成されており、重要なものではあるが、その予想を超えた津波の場合はあてにならない。とにかく、訓練で実践したことを忠実に守ること」
  2. 出来る限りの最善を尽くせ
    「もしもその時が来たら、他人を救うよりもまず、自分の命を守り抜くことに専念せよ」
  3. 自ら率先避難者たれ
    「人間はいざというときに、逃げるという決断がなかなか出来ないものである。例えば、非常ベルが鳴ったときに逃げ出す先生を見たことがあるか?ベルが鳴ったとしても誰もが周囲をきょろきょろ見渡して周りがどうするかを見ている。だから、君が逃げるんだ。君が率先してその状況を打ち砕け」

片田教授の教えは、避難3原則の「なぜその行動が必要なのか」という理由や目的を明らかにし、浸透するまで伝え続けるというものでした。

もう一つの大きな行動としては、子供だけでなく、その親や親戚にも教えを浸透させることでした。親が逃げていないのではないかと、子供が後ろ髪引かれると、「②出来る限りの最善を尽くせ」の行動が出来なくなるからです。

最初は、やはり耳を貸す人は少なかったようです。しかし、片田教授の熱い想いが浸透していき、定期に行う避難訓練の参加者が増えていったとのことでした。

リーダーは「伝える」ことだけではなく、相手が「心から納得する」まで粘り強く話し、そして相手にも同じ行動を求めることが重要であり、片田教授はそれを実践された稀有な存在であると言えます。

この活動を根気強く進めてきた結果、数千人の命を救うことになりました。たった一人のリーダーの熱い想いが奇跡を生んだのです。

何度も何度も、この場面を繰り返し読みました。リーダーとしての想いは次のポイントが一番重要であると感じました。

  • リーダーの想いは「避難3原則」などの明確な「行動レベル」にまで落とし込まれたシンプルな「言葉」にされることが必要であること。
  • リーダーの教えは、ただ話すだけなく「なぜその行動が必要なのか」という理由,目的を明確に相手の心に響くように語りかけることが大切であること。
  • リーダーは、実施して欲しいことは1回伝えるだけでなく、相手が心から納得するまで粘り強く話し、同じ行動をしてもらうように求めること。

片田教授のように大事業ではありませんが、このリーダーの想い,行動を自分の中にも取り入れることが重要と感じ、実践することとしました。

リーダーとして認められ、そして皆と心が一つに!!


まず、「朝礼はその日の伝える大切なことだけを話し、3分以内で必ず終えます」と宣言しました。

後からメンバーに聞いたのですが、突然のことだったので、正直驚き、私に何が起こったんやろうと思っていたそうです。

そして次に、部署方針を掲げました。

  • 量産品不良は徹底して原因部署と真の原因を詰め、対策を1週間以内に仕上げること
  • 社外クレームについては、担当営業に対し、1次報告を2日以内に、最終報告を1週間以内に行うこと
  • 不良調査は、推測で行うのではなく、3現(現場,現物,現実)を必ず行い、その結果を記録しておくこと
  • これら活動の中で、不明点や活動しにくい事項などが発生したら、その時点ですぐに相談すること。また、期限に遅れそうなら、事前にその旨報告すること。

この方針をもとに、各製造部署を担当する担当者をメンバーの中から割り振りました。そして、なぜこの行動が重要なのかの話をしました。

皆の地道なこの活動が、顧客の信頼を得て、会社利益に貢献し、結果的に皆のボーナスアップに繋がることを、具体的な数字を示し説明しました。

最初は慣れない行動のため、嫌々ながらでしたが、経験を積んでくると、製造部署の担当者との繋がりも強くなり、スムーズに行動出来るようになってきました。製造部署には協力してもらえるように、事前に話をし、協力の取り付けを私の使命としておりました。

この活動を続けていった結果、メンバーとのコミュケーションが増え、プライベートな会話も出来るようになってきました。

そうすると、不思議なことに、部署内の仕事がスムーズに回り、仕事量は変わらないのに残業が減ってきました。

方針の宣言から半年後、この「釜石の奇跡」の話をしました。そこから、リーダーとしての想いに感銘し、実践してみたと伝えたところ、私が急に変わった、驚きのあの日に納得したようでした。

このあと、メンバーの行動に感激し、感謝した出来事がありました。

ある時、火災に関する避難訓練があったのですが、非常ベルがなると同時に、メンバーが一番先に走って避難し、どの部署よりも早く、避難場所に揃ったのです。

メンバーと心の底から気持ちが通じたことを実感し、感謝の心でいっぱいになった瞬間でした。

まとめ

今回の経験で感じたことは、リーダーの想い(方針)をシンプルに語り、その理由と目的をしっかり伝え、その方針を貫けるよう行動レベルに落とし込み、メンバーが粘り強く続けていく後押しをする、この一貫性がリーダーとしては最重要であるということでした。

人というものは、大きな変化を嫌がります。部署に新しいリーダーがくるというのは、大きな変化点であり、今までの文化を変えられる可能性があるので、様々な抵抗に逢うかもしれません。しかし、リーダーの想いが心に響けば必ず変わっていけるものです。

今、同じような状況で悩んでいる方は、まずは、その置かれた環境で何を行いたいか、何を変えたいかを真剣に考えて下さい。そして、それを行う目的,意味をしっかりと深堀りし、メンバーにしっかりと話しましょう!

話しにくいかもしれませんが、メンバーに語りかけることもリーダーの役目です。

心に響かせれば、メンバーの行動が変わってきます。そうなれば、自分が引っ張っていく大切な部署となり、大好きな居場所となります。

ぜひ、リーダーとしての強い想い,信念をもって、メンバーとの心の交流を大切にして下さい。