小説を書く難しさから解放し、私をプロ小説家として導いてくれたのは「マンガでわかる小説入門」でした

iepnonu
ライター・作家。
学生時代から執筆業を志し、現在は幅広くライティング活動を行っている。
明るく楽しい話を読んだり書いたりするのが好き。
いつの時代も小説家は人気の職業ですが、実際に自分が書くことになると、予想以上に苦戦してしまうものです。

今回は、プロデビューのチャンスを活かすだけでなく、今後にも大きなプラスになる一冊を、私の実体験を交えてご紹介させて頂きます。



突然の小説原稿依頼! プロデビューできるかも


今から十年ほども前の話になります。当時の私は、就職せず、ライターとして実績を積み重ねようと努力を重ねていました。

書き物は学生の頃から続けていましたので違和感なく仕事を進めることができ、少しずつ仕事も入るようになっていたため、収入は不安定でしたが、将来への不安は特に感じることがありませんでした。

そんなある日のこと、かねてから原稿を見せたりしていた出版関係の方から、「小説を書いてみないか?」とのお誘いを受けることになりました。

急なお話でしたが、基準以上のものを仕上げることができれば、すぐに載せてくれるニュアンスを感じることができました。

「僕で良ければ……」と、私は即答しました。

ライター仕事をしながらも作家になりたいと思っていましたし、趣味の時間に小説を書くこともしていたからです。

また、小説界に興味があるからこそ、新人賞選考は物凄い倍率になっていて、たとえ新人賞が取れてもデビューが難しい業界の事情を知っていたのも決心につながりました。

「プロの原稿が書けない」……。苦戦するも見えない出口


「じゃあ、頑張って……」と言った感じのリアクションを受けた私は、早速執筆に取りかかることにしました。

プロの仕事となると、担当さんが付きっきりで面倒を見てくれるような印象があっただけに、かえって切羽詰まった先方の気配を感じます。だからこそ、掲載率は高いのでしょうが、失敗したら次はないということもヒシヒシと感じざるを得ませんでした。

「よしっ、やるぞ!」と、私は気合いを入れて原稿に取りかかりました。幸い、依頼された小説のテーマは難しいものではなく、趣味では何度も書いたことのあるジャンルのものでした。丁寧にやればほどなく完成するだろうと、机に向かった私は考えていました。

しかし、実際に始めてみるとまったくうまくいきません。文字を打ち込めないのではなく、話は進んでいくのですが、「完成」が見えてこなくなってしまったのです。

プロとして小説を書く以上、原稿を送る出版関係者だけでなく、当然読者のことを考えて仕上げる必要がありますが、そのことを考えるとまったく自信がなくなってしまったのです。

エッセイや評論といった他の書き物なら、読書や取材で見識を深めて原稿のレベルを上げるということができますが、小説の場合、それにも限界があります。

単純に小説としての魅力を見せる必要がありますが、手応えがまったく感じられなくなってしまったのです。

小説家として活動する以上、誰もが経験する難しさだったのかも知れませんが、当時の私にはかなり苦痛でした。

迫る締め切り、現実逃避の中で見つけた「マンガでわかる小説入門」……!

引用元:『マンガでわかる小説入門』Amazon

もちろん、こちらの苦心、苦労には関係なく締め切りは迫ってきます。と言うより、余裕がなかったからこそ、つながりがあるだけで実績ゼロの私に依頼が来たわけですから、スケジュール的にはかなりタイトです。

まったく決め手を欠いたまま、締め切りまで間もなくという状態に陥ってしまいました。

そうなると、色々なところに助けを求める段階となっていきますが、取り掛かっている仕事が小説を書くという特殊なものだったため、家族や友人からのアドバイスも期待できません。

やむなく私は、ネットで様々なノウハウ本の情報を集めることにしました。

もっともこれは、半ば現実逃避と言ってしまっていいようなスタンスでした。何が良いかなんて分からないし、読み切って実際に創作に活かすまで時間がかかるので、結局締め切りには間に合わないことも、薄々理解できてしまっていたからです。

ところが、そんな状況の中「マンガでわかる小説入門」を見つけることになります。

どうやらこの本は、読んで字の如し、漫画を読むだけで小説を書くためのノウハウが手に入る、とのことでした。そんな都合が良い話なんてあるのか、と、私は疑い八割ぐらいの気持ちで本を注文し、読んでみることにしました。

結論から言って、その本は実に素晴らしいものでした。

当時の私と同じ、二十代半ばの若者が、まったくゼロの状態から、趣味ではなく小説家を目指して、小説を執筆していくという筋立てで書かれているだけあって、内容も極めて初歩的な部分から余すところなくフォローされており、しかも極めて実用性に富んでいました。

さらに、理解に多くの時間がかかるような高度な理論はないため、すぐさま書きかけの小説に反映させ、内容を高めていくこともできました。

何より、小説を書き始め、仕上げるまでの全過程が漫画で示されているので、読了までの時間もかからず、イメージ的に理解しやすかったのも本当に嬉しかったですね。

おかげで締め切り期限までに十分余裕を持たせる形で、プロ的に説得力のある作品を書き上げ、先方に送ることができました。

発注先から高い信頼を獲得。定期的なレギュラー扱いに加え、他社からの仕事も


プロとして小説の原稿を送ること自体が初めてだったので、相当緊張しましたが、特に手直しなどの注文はなく、見事に一発で掲載にこぎつけることができました。

しかも先方からの評価は極めて高く、こちらから見ても意外なほどの優遇を得ることができました。その場限りではなく、媒体のレギュラー枠として、今後も定期的に書いてくれ、と頼まれることになったのです。

もちろん、原稿料も頂くことができました。プロとしての報酬ですから、とても嬉しかったのはもちろんのこと、確かな自信、実績にもつながります。

レギュラーに任命されたからには、常に水準以上の作品を提供しなければなりませんが、この「マンガでわかる小説入門」に書かれている執筆ノウハウはとても実用的なもので汎用性が高く、様々な作品に適用することができました。

今まで漠然と考えていたイメージを、しっかりとした作品として形にできるようになったことは、他の出版社や媒体から小説の仕事を得ていく際にも大いに助けになりました。

デビュー以来の実績が「履歴書」のような効果を生み、今までよりもかなり楽に新たな仕事を得ることができ、小説家としてのキャリアを継続することができました。

長年現役のプロでいるには、早いうちに扱いやすい「武器」に出会うことが重要


このデビュー以来、私は幸運にも十年以上、プロの小説家として活動させて頂いています。

未だに目立ったヒット作はありませんが、基本的にその作品ごとの「契約」であり、いつ首を切られるか分からない小説家という仕事をずっと続けられているのは本当に嬉しいことだと感じています。

際立った才能があるわけではない私がプロとして良いキャリアを積むことができたのは、デビュー前の早い段階で、扱いやすく応用もさせやすいノウハウに出会い、実作を通じてそれを磨いていけたことが大きかったのだと思います。

どうやって優れた作品を書くかは本当に人それぞれですが、単に基礎をしっかり固められ使いやすいというだけでなく、すぐに読み込め、イメージが掴みやすい漫画形式を採用した本書は、何のジャンルに挑戦するにしても、もっともオススメできる一冊ではないかと思います。

優れたノウハウ本は様々ありますが、書き始めから完成までに必要なこと全てを漫画で一冊にまとめたものはほとんどありません。

発売からかなり時間は経っていますが、まったく色あせずに通用するノウハウが詰まっており、特にこれから小説を書いてみたい方、ライティングの仕事を既にやっていて、小説の分野にも仕事を広げたいという方には最適な一冊です。